さくら みた ?

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犬と桜を語る?

 桜を見に行くための準備に追われていた数日前、車で大通りを直進するために、信号で真ん中の車線に止まった。隣は右折車線で私の車の少し前に大型車が止まっていた。いきなり後部座席の窓が開いたと思ったら、なんとゴールデンリトリバーの大きな顔が出てきた。思わず

「あら、ゴルちゃん、さくら みた?」と聞いた。

犬は目を少し彷徨わせ、多分足も少しジタバタした感じで私を見つめる。

「アッ、これから行くのね?」

犬の目がぱっちりして、なんだか喜んでいるような気がした。

前を見ると信号が青に変わった。

「じゃぁ、楽しんでね!」

車はそれぞれの方向に進んで行った。

 

あれ? 私がオカシイのか? 相手は犬だよ。

何で、話しかけたの? 日本語で返せないんだから、犬は困っていたじゃない。

それより、運転者は、私をみてしまったかな? なんてアホな奴だって!

まあ、二度と合わないし、いいか。

それにしても、あの犬、私の事どう思っただろうか?

満開の桜の下で

 それからしばらくの間に桜は満開になり、私たちもそこそこの自粛の中で、花見を楽しんだ。そして今や小さくて美しい緑の葉が所々に出てきて、散る花を守っている。今年の桜は宴会と無縁になり、純粋に花を愛でているような気がする。

あの犬も、あの家族もきっとそうしただろう。多くの人がそうできただろう。

 一昨日も、桜御膳を作って高校時代の友人にふるまった。桜御膳とは名ばかりで、赤の漆盆に、カルシウムが足りなくなった、70歳代の私たちにふさわしい、小魚や豆腐類を小皿に盛りつけただけの膳である。それでも、人を招くことは、結構気を使い、時間をとってのおもてないしだった。友人は姉がほとんど袖を通していない美しい正絹の着物や母の帯を持って帰った。私はたとう紙に包んでから、渡したが、たくさんあって困っていたのにいざ譲るとなると心残りが出るのが不思議だった。ベランダにあった珍しい白の花いっぱいのローズマリーととツルーラベンダーの鉢植えもビニールに包んであげた。

 朝5時起きで支度して、丸一日の散策と接待に疲れたものの、その後気持ちよく1000M泳げたから、きっと気分が良いのだ。

 まだ、遠く丘の上の緑の木々の間から美しい色を広げる桜が見える。心のふるさとのようなこの景色が私は何より好きでたまらないが、それも間もなく緑一色になるだろう。

 この後は一昨日花皿に盛った、さくら色の花たちが、私の心を慰めてくれている。